nakatalab小論文教育ブログ

考えて書く力を習得する、小論文教育

小論文教育 No19 小論文テーマ「日本のジェンダ―ギャップ指数、どう読み取りますか(ver4)」

小論文教育 No19 小論文テーマ「日本のジェンダ―ギャップ指数、どう読み取りますか(ver4)」

 

 みなさま、明けましておめでとうございます。昨年末に残した問題の最終回です。

 さて、東京大学お茶の水女子大学が共同研究や人材交流で連携を深める包括協定を結びました(日本啓座新聞朝刊2023年1月7日)。高等教育機関(大学)の教員では、ジェンダーギャップ指数を改善してゆこうという動きがありますよね。私は個人的には、高等教育機関だけでなく中等教育機関も該当すると思います。ジェンダーギャップは教育の歴史です。

 

 国語の授業で『こころ』(熱目漱石)を教えています。「わたし」も「K」も大学生ですが男性です。そして「お嬢さん」は大学生ではありません。ここからも、大学には男性の学生が入学しその卒業生が大学の教員となることが読み取れます。女性は家庭を担うというジェンダーギャップが見られます。

 

 現代の教育はジェンダーギャップを改善してきました。女性が大学を卒業し、就職する。ただし、女性が進出する分野は偏っている。それは、日本だけではありません。ですから、そこを改善すれば、イノベーションの源泉があります。皆さんは、どのように思いますか。

 私は授業で男子高校生にジェンダーギャップをどのように思いますか、と聞きました。

 

  男女では能力的に異なっているから、技術職や専門職にあまり進出しないのは、しかたがない。

 

  育児で職場の仕事を離れるから、管理職や幹部職の女性の数が少ないのは当然では。

 

という意見を聞いています。以前にも書きましたが、そうなのでしょうか?私は歴史的なものの考え方は制度的に作られていると思っています。なので、こうした男子生徒の意見には懐疑的です。

 

 さて、話を今回の問題に戻します。

 問三 データの読み取りを踏まえ、日本のジェンダーギャップ指数の改善のために、今後どのような対策を取るべきだと考えるか、三百字以内で述べよ。

 

 前回の解答(問二)に一部、誤りがあったので訂正しました。訂正した解答を次に示します。

 

「政治」の分野の推移は、いずれの内訳の指数もほぼ変わらず、順位は低下している。内訳の男女比はいずれも低く、国会議員の数や女性の閣僚の数も少ないことがわかる。

「経済」の分野の推移は「専門職・技術職の男女比」以外の指数がいずれも改善されている。「勤労所得の男女比」「議員、幹部職・管理職の男女比」「専門職・技術職の男女比」の順位は顕著に低下している。中でも、「幹部職・管理職・専門職・技術職」の女性の雇用率が低いことが男女の所得格差をもたらしているとわかる。

「教育」の分野の推移は「高等教育在学率の男女比」の指数は改善しているが、順位は低下している。この項目について、日本以外の諸国の女性の進学率が日本以上に上がっていることがわかる。

 

 上記の課題を解決するための対策を尋ねているのが、今回の問題(問三)です。では、女性のライフイベントという視点から、この問題の解答を考えてみましょう。

 

 女性が高等教育機関を卒業する。技術職(専門職)に就き、既存の商品にはない多様なユーザーの要望に応える商品を開発する。売り上げや利益を上げた女性の技術者が幹部職や管理職に就任する。その際に、障害となるのは育児と仕事の両立です

 

 その両立を進めるためには、政治分野に女性が進出し、働き方を変えるための制度や法律を提案していく。女性の政治進出が進まないようであれば、北欧の一部の国のように、クウォータ制を導入する。なぜなら、男性よりも女性の方が、切実な問題なので、男性中心の国会ではなかなか改善が難しいのではないでしょうか

 教育と経済の連携をはかり、それを支える政治の支援ということを進めるのが必要だと考えたらどうでしょうか。

 

 私も次のような解答を書いてみました。

 

「政治」の分野は、女性の国会議員の数を増やし、女性の閣僚数を増やすことである。その際に、クゥオータ制を導入し、国会議員の女性の数を増やすのも有効である。女性が政治分野に進出し、育児と職業の両立を進める発言をし既存の制度を改善する。

「経済」の分野は女性の専門職・技術職の数や女性の幹部職や管理職を増やすことである。革新的な技術を生み出すために、既存の組織制度を改善することや男性中心の発想や思考から多様なユーザーの思考に転換する。そのために女性の技術者や専門家が必要となる。

「教育」の分野は高等教育の女性の在学率をさらに引き上げることである。卒業後、政治・経済の分野に進出し活躍する連携が必要で、政治・経済の課題を解決する教育を行うことである。

 

 この問題は女性のライフイベントをどのように考えるかという問題でした。皆さんが、女性であれば自分のライフイベントを、そして女性以外の方であれパートナーとのライフイベントを、考えることが大切です。そうした長期的視点に立つのは、受験が差し迫った受験生には難しいかもしれません。ですが、長期的な視点でものごとを深く考えると、小論文で問われていることが俯瞰的に見えてきます。

 

 ライフイベントの課題をつなげていく長期的な視点を提案することが、小論文攻略の方法です。今回は、女性の高等教育入学、就職、育児と仕事の両立というライフイベントの課題を取り上げました。