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小論文教育 No15  小論文テーマ「高齢者の年間医療費は今後どうなるのか(解答編2)」

小論文教育 No15  小論文テーマ「高齢者の年間医療費は今後どうなるのか(解答編2)」

社会保障制度維持の財源をどう考えますか



 上のグラフ(男女1000人アンケート)から社会保障制度維持の財源として高所得・資産の高齢者の負担増はやむを得ないという回答が生産年齢のどの世代に於いても、多いことがわかります(日本系経済新聞朝刊2022年11月22日)。さて、高齢者の年間医療費の問題を、さらに深く考えてゆきます。

 

 問題2の回答をお寄せいただきました。問題は、次のようなものでした(グラフ1・3は掲載省略。『小論文教育No15小論文テーマ「高齢者の年間医療費は今後どうなるのか(解答編1)』を参照してください)。

問題2(私が問題を一部改変しました)
グラフ1やグラフ3より、65歳以上の高齢者については、医療費の支出額が今後、さらに増えていくことが想定されます。

そこで、自己負担の割合を上げようという意見が出され、今年(2022年)の10月には介護保険料の自己負担額が年収200万円以上の高齢者は引き上げられました。

その一方で、社会保険料の支出額の増大を「姨捨山」のような社会問題として取り上げるよりも、「高齢者が元気でいながら何の役割も与えられない環境こそが問題であり、このことが我々の直面する多くの課題を生み出しているのではないでしょうか」という意見もあります。

 高齢者が元気でいながら何の役割も与えられない環境を改善する取り組みとしてどのようなものが考えられるか。あなたが有効だと考える取り組みの具体例を一つ挙げて、その取り組みが環境の改善につながる理由を説明しなさい。また、その取り組みが社会の直面している課題の解決にどのように貢献するかについて、あなたの考えを理由とともにわかりやすく述べなさい。 (500字以内)

 

Aさんからのものです。

 

高齢者が元気でいながら何の役割も与えられない環境を改善する取り組みとして、高齢者が中心となって企画・運営を行う祭りの開催が有効である。祭りを開催するためには①様々な役割を分担するために多くの高齢者の力が必要である。元気な高齢者に積極的に参加してもらうことで、持っている②経験やノウハウを十分に生かしてもらうことができる。参加した高齢者が誰かに頼られていると感じることで、③やりがいや生きがいを感じ、さらなる心の健康につながる。祭りを1回だけではなく、定期的に開催することで、より多くの高齢者に参加してもらえる環境を作ることができる。

また、このような取り組みは④孤独死の解決の一助になることも期待できる。現代社会では、昔と比べて地域交流や近所付き合いが希薄になり、孤独死する高齢者の増加はそのようなこと大きな原因の一つではないかと指摘されている。祭りを通じて⑤地域や近所での関わりがより活性化され、定期的なコミュニケーションが生まれることで、孤独死を防ぐことが期待される。また、高齢者が普段の生活で感じる不安や悩みを共有する場が生まれるという面でも効果的であると考える。

 

 ①②③の指摘にあるように、祭りを運営することで高齢者の経験やノウハウを生かし、心の健康を保持するという提案をとてもよくまとめています。④では孤独死の解決の一つになる提案もあり、さらにいいと思います。

 この問題は私が改変したものですが、オリジナルは、次のようなものです。お読みになってください。

 

筆者(注 課題文が問題に付与されています。今回、掲載しません)は「高齢者が元気でいながら何の役割も与えられない環境こそが問題であり、このことが我々の直面する多くの課題を生み出しているのではないでしょうか。」と述べている。高齢者が元気でいながら何の役割も与えられない環境を改善する取り組みとしてどのようなものが考えられるか。あなたが有効だと考える取り組みの具体例を一つ挙げて、その取り組みが環境の改善につながる理由を説明しなさい。また、その取り組みが社会の直面している課題の解決にどのように貢献するかについて、あなたの考えを理由とともにわかりやすく述べなさい。 (500字以内)

 この問題に対する、Aさんの回答は、取り組みの具体例、また改善の提案、社会問題の言及という問いの要求に応え、納得できる説明をしています。及第点です。

 

 ただし、私は今回、次のような問題にオリジナルを改変しました。よく、お読みになってください。改変した部分を、オレンジ色の太字でアンダーラインを引きました。

 

問題2(私が問題を一部改変しました)
グラフ1やグラフ3より、65歳以上の高齢者については、医療費の支出額が今後、さらに増えていくことが想定されます。

そこで、自己負担の割合を上げようという意見が出され、今年(2022年)の10月には介護保険料の自己負担額が年収200万円以上の高齢者は引き上げられました。

その一方で、社会保険料の支出額の増大を「姨捨山」のような社会問題として取り上げるよりも、「高齢者が元気でいながら何の役割も与えられない環境こそが問題であり、このことが我々の直面する多くの課題を生み出しているのではないでしょうか」という意見もあります。

 高齢者が元気でいながら何の役割も与えられない環境を改善する取り組みとしてどのようなものが考えられるか。あなたが有効だと考える取り組みの具体例を一つ挙げて、その取り組みが環境の改善につながる理由を説明しなさい。また、その取り組みが社会の直面している課題の解決にどのように貢献するかについて、あなたの考えを理由とともにわかりやすく述べなさい。 (500字以内)

 

 私が改変した問題も、後半は変わりません。問題の前半が違います。医療費の負担を巡って、生産年齢世代と高齢者世代の対立が「姨捨山」のような社会問題となり、どちらかが損得する問題になっていることを指摘しました。高齢者の医療費の負担については、所得実態をきちんと把握できていない現状では、高齢者の自己負担額を上げる対象を明確にするのが困難な状況です。ですが、生産年齢世代の負担率がこれ以上、高まれば、負担をせずに医療費を使い続ける高齢者を「姨捨山」のように切り捨ててしまう、とにかく負担を増やせという解決策に至ってしまいます。

 オリジナルの問題は「高齢者の年間医療費の問題」に対して正面から向かい合って取り組んでいないと思いました。そこで、私は問題を改変しました。

 問題に対する解決策ですが、生産年齢世代の問題を解決する役割を高齢者に担ってもらい、生きがいを感じてもらえる取り組みがないか。それが、この問題を解決する方法ではないか。

 

  生産年齢世代の問題点は何か。さらに限定して、共働き夫婦の悩みは何か。

 

 共働き夫婦の悩みを解決する役割を高齢者が担えないかという観点で、次のような解答を書いてみました。

 

 高齢者が生産年齢世代を支援する取り組みとして学校の活用がある。高齢者が小学生の登下校を見送り、交通ルールのマナーを守らせている。あるいは、放課後や休日に学童などで、子どもたちの学習を支援したり、ともに遊んだり話を聞いている。両活動ともにボランティアである。ボランティア活動だけでなく、高齢者は、生産年齢世代の経済活動を支援する取り組みに参加するのはどうだろうか。

 未就学児を育てる夫婦は、保育園の送り迎えに悩みを抱えている。高齢者を送り迎えの人材として活用すればこの問題を解決できる。夫婦にとっても始業・就業時間を気にせずに出社でき、高齢者も若い世代の家族を支援し交流し賃金を得る事ができる。高齢者は心身ともに健康を保持できる。また若い世代の夫婦も育児の悩みなども相談でき、お互いに顔の見える活動となる。そして、産休を取得し会社を休んでいる女性も高齢者の支援と保育園を利用すれば早期に職場に復帰できる。女性が職場を離れずに働き続ける環境を整備し拡大することは女性が担う社会保険料の負担を減らさず、さらに扶養控除の限度額を超えた働き方を担う女性が増えれば財源の減少傾向を止める対策にもなりうる。

 

 ここまでは、なかなか書けないかもしれませんが、社会問題を解決する意識をもつことができれば、解決の糸口はつかめるはずです。私は三鷹市のシルバー人材に、子どもの保育園の送迎では大変お世話になりました。とくに、Iさんのご支援には感謝してもしきれません。

 上記に書いたことは、そのシルバー人材センターを利用した経験をもとにしています。三鷹市のような取り組みは、他の自治体ではあまりないようです。皆さんも自分の自治体の取り組みを、調べてみてください。

 そして、こうした取り組みを自治体が主導し拡大することを願っています。もし自治体の支援が遅れていれば民間サービスでおこなえばいいのです。自分が退職したら、こうしたサービスを提案してもいいかなと、思います。

 皆さんで、社会問題を解決するサービスを企業したらどうでしょうか。そうした夢をもって、大学進学をめざすことを願っています。

 

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