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小論文教育 No12 小論文テーマ「再分配型の社会って、どんな社会?」 『人口減少社会のデザイン』(広井良典)を読んで

小論文教育 No12:小論文テーマ「再分配型の社会って、どんな社会?」 『人口減少社会のデザイン』(広井良典)から考えてみましょう

 

 再分配型の社会って、どんな国をイメージしますか。北欧諸国のような、社会保障は手厚いけど、税負担が重い国ですよね。日本でも、「成長と分配」という主張を岸田内閣が提案していますよね。そこで、「再分配型の社会」を、小論文のテーマとして、考えてみましょう。

OECD諸国における女性の就業率と出生率の相関

  上の表は女性の就業率と出生率の相関を表しています。興味深いのは、就業率が上がると出生率も上がっています。日本では、就業率が上がって出生率が下がっています。

 なぜ、日本の出生率は低いのでしょうか?皆さんはどのように考えますか。

 

 一言でいえば、将来の不安です。

 

地域によって異なる課題

 この棒グラフは地域社会の課題を明示しています(P93)。1若者世代の減少(人口1万人未満)、中心市街地の衰退(人口5万人以上30万人未満)、3少子化高齢化の進行(人口100万人以上)という、特徴が読み取れますね。

 三つの層に地域の問題が分かれています。

 さてこれらの問題の始まりの時点はどこにあると思いますか?

 

 答えは、高度成長(1960年代)の時期にあります。ここから、始まってゆきます。

 

 ここでは、詳しい説明ははぶきます。1990年代の後半に、首都機能の移転という話題で、地方都市の活性化が取り上げられました。私も、その時代に地方都市にいました。小売業の企業誘致が行われていました。これは、中心市街地の衰退をもたらしました。

結局はバイパスを中心にした、地方都市の空洞化だけを残していきました。

 

 また、税の財源の提案をしてます。私が注目したのは、1消費税率の引き上げ相続税の対象者を増やすなどが挙げられていますが、2です。財務省も2については、2023年度の税制改正で検討しています。贈与税の優遇を削減することによって、相続税の対象者が増えることになります。

 

 本の中では「税の累進性による再分配から社会保障給付による再分配へ」(P219)という主張でまとめられています。北欧諸国などを念頭に説明しています。今までの社会保険料によるものではなく、税収を中心にした社会保障に切り替えることを提案しています。

 

 皆さんはこの提案をどう考えますか?

 

 私は次のように考えます。国の人口規模、高齢者の割合などが日本と北欧諸国では異なります。また、税収中心という提案は給与収入が増えなければ、負担感を増してゆくことになります。すると、また将来の不安が継続するのではないでしょうか。

 

 現在の社会保険料では社会保障の収支を賄うのは、もちろん難しいです。ただし、相続税の対象者の範囲を増やすだけでは、抜本的な解決にもなりません。相続については、将来の暮らし(住宅など)を親から子へ継承してゆく面が、日本にはあります。 住宅を個人で所有することを中心に、税制の改正が行われてきました。また住宅ローンの政策も進められてきました(注1「はじめての金融教育No8」をご参照ください)。

 

 再分配社会型の社会保障にすることで若い世代に於ける、経済格差を是正すると、筆者は述べています。私も、若い世代の負担を考えると、再分配の考え方の必要性はわかります。政府予算(2019年度)の一般会計歳出の内訳を見ると、社会保障が34兆円(33.6%)ほどを占め、文教及び科学振興が5兆円(5.5%)ほどです。文教及び科学振興のうち、文科省の教育予算は4.2兆円です(P182)。

 

 圧倒的に若い世代に対する負担が多いのは、この予算の内訳を見るとはっきりしています。ですから、若い世代に再分配をという考えは、よくわかります。若い世代への再分配として、教育費の再分配が取り上げられています。大学の教育費負担を減らす政策は検討すべき課題です。また、高校教育費の無料化(所得制限はありますが)などは既に実施されています。

 

 ただし、「税の累進性による再分配から社会保障給付による再分配へ」という政策の転換には、相続税税制改正を部分的に行うだけでなく、どのような社会モデルの未来を描くのかを提示する必要性を感じます。

 

 高度成長時のような成長経済を望むのは、成熟経済の日本では難しいです。再分配をしても、ある程度の経済成長をしないと、低所得者は働きたくても仕事が見つかりません。成熟経済の中で「成長と再分配」のバランスをどのように取るのか、が大きな課題です。

 

 さて皆さんは「税の累進性による再分配から社会保障給付による再分配へ」という考え方について、どのように思いますか?

 さらに詳しくは、本を手に取ってお読みください。

 

 

(注1)

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