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小論文教育 No14  小論文テーマ「高齢者の年間医療費は今後どうなるのか(解答編1)」

小論文教育 No14  小論文テーマ「高齢者の年間医療費は今後どうなるのか(解答編1)」

グラフ1

グラフ3

前回の続きです。このグラフ1とグラフ3から国民医療費の今後の推移は読み取れましたか。

 私も次のような解答を考えてみました。

 

 グラフ3からは、一人当たりの年間医療費は60歳ごろまでは20万円を超えた程度であるが、それ以降は年齢が上がるごとに増大しているとわかる。85歳以降では100万円を超えていて、生産者年齢人口の医療負担率が高いことが明白である。

 グラフ1からは、2020年から2060年にかけて、64歳以下の生産者年齢の人口が減少するとわかる。グラフ3の医療支出が継続すると考えれば、生産者年齢の国民医療費は人口の減少に伴い、減っていく。一方、65歳以上の高齢者の人口は2040年まで増加しその後も横ばいに推移し、国民医療費は増加する。100万円を超える85歳以上の後期高齢者の人口も同様に増加し大幅な国民医療費の年間支出の増大をもたらすことが予想される。

 

 このグラフを読み取ってわかることは、現役世代(生産者年齢)が社会保険料を多く負担していて、今後ますますこの傾向が強まることです。そうすると、日本社会の成員の中で、現役世代と高齢者が二分化された社会が生まれるかもしれません。

 

 そうした二分化した社会の思考をゼロサム思考と呼びます。

 

 そこで、高齢者を対象にした、ゼロサム思考ではない新しい経済のモデルが必要になってきます。今回『OPEN』(ヨハン・ノルベリ ニューズピックス)を取り上げます。

 

 

 「貿易をゼロサム・ゲームだと思い込んで育った人は、貿易をウィンウィン現象として理解するシナリオを頭では理解しても、貿易を道徳的に容認できなくなってしまう。」(p316)

 

 昨今のアメリカと中国に於ける、経済対立などはゼロサム化していますよね。そして、そのような見方で、物事を考えて判断してしまいます。

 ですが、実際にはiphoneは、中国の部品も使われていてウィンウィン現象で、我々はさまざまなイノベーションの成果を得て、優れた商品やサービスを受け取っています。

 そして、この優れた商品やサービスは世界の高額所得者のジェフ・ベゾスだけなく、我々も利用できるのは、貿易がウィンウィンだからです。

 

 「一般人が断熱材、電気、屋内トイレのない家で我慢する必要もない。(中略)私たちの子供は、ベゾスの子供たちとほぼ同様に読み書きと、退職するまでの生きる術を習得する機会を持つ。」(p322)

 

 貿易は国外的な関係の場合です。しかし、国内の問題である超高齢社会についても、ゼロサム視点で考える傾向が、今後強くなってくるのではないでしょうか。

 

 そこで、高齢者を活用した社会モデルが必要になってきます。これは、高齢者の生きがいという個人的な欲求を満たすだけでなく、社会集団内での分裂を乗り越えるためのものでもあります。

 

問題2(私が問題を一部改変しました)
グラフ1やグラフ3より、65歳以上の高齢者については、医療費の支出額が今後、さらに増えていくことが想定されます。

そこで、自己負担の割合を上げようという意見が出され、今年(2022年)の10月には介護保険料の自己負担額が年収200万円以上の高齢者は引き上げられました。

その一方で、社会保険料の支出額の増大を「姨捨山」のような社会問題として取り上げるよりも、「高齢者が元気でいながら何の役割も与えられない環境こそが問題であり、このことが我々の直面する多くの課題を生み出しているのではないでしょうか」という意見もあります。

 高齢者が元気でいながら何の役割も与えられない環境を改善する取り組みとしてどのようなものが考えられるか。あなたが有効だと考える取り組みの具体例を一つ挙げて、その取り組みが環境の改善につながる理由を説明しなさい。また、その取り組みが社会の直面している課題の解決にどのように貢献するかについて、あなたの考えを理由とともにわかりやすく述べなさい。 (500字以内)

 

ゼロサム思考型にならない、解答をお待ちしています!

問題2についての回答の宛先は

serajobin3@gmail.com  まで。