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小論文教育 No7 人間の判断は正しいの?小論文テーマ「インフォームドコンセント」

 小論文教育 No7:人間の判断は正しいの? 小論文テーマ「インフォームドコンセント

 皆さんが、窃盗罪の嫌疑を受けて裁判を受けたとします。その裁判官の判断がAさんとBさんで違ったらどうでしょうか?Aは実刑判決6年で、Bは執行猶予判決6カ月であったら、どう思いますか?

 

  公正でない、と思いますよね。

 

 裁判官の裁量権には、幅があるだろうな、しかし、A・Bほど、判決の幅があるとは誰も思っていないでしょう。この幅(スケール)を判断のノイズと言います。

 今回は、「NOISE 上・下」(ダニエル・カーネマンなど 早川書房)を取り上げます。この本の中で、統計処理として平均二乗誤差を利用して判断の誤りを指摘します。

 

平均二乗誤差 = エラーの平均(=バイアス) + エラーのばらつき(=ノイズ)

 として、平均二乗誤差を利用した心理学モデルや臨床研究を紹介しています。数理モデルについては、上巻で詳しく説明しているので、そちらを参照してください。

 

 我々が判断の過ちを犯すのは、バイアスもありますが、ノイズによっていると主張しています。

 バイアスとは、人種、性別、年齢などで対面した人物を判断する誤りです。これは、偏見とも言われます。そして、さまざまなハラスメントをもたらしています。

 一方で、射撃をするチーム(A~D)が競い合った際に、的に当たった銃弾の跡のばらつきが、各チームで違います。これを、ノイズと捉えます。

 これはおもしろい考えですよ。

 

 たとえば、皆さんが入学試験や入社試験で最終面接に進んだ際に、2~3人あるいは5人~8人の面接官を前にする場合があります。面接側は慎重に合格者を判断しなければならない。会社は採用を失敗すれば、自社の数年後の業績に関わります。ということで、面接官の人数を増やすわけです。

 ですが、カーネマンによると、人数を増やせば、その分だけ、判断のばらつきが生じるわけです。

 それに対して、自分たちの判断は常に一致しているという反論する経営者がいたとします。カーネマンはどのように応えるでしょうか?

 

  そこでは、ノイズは生じないが、その面接官の中のバイアスが生じています。

 

 裁判官、経営者、保険事故担当者、アナリストなど高度の判断の裁量を任せられている職務には、バイアスがつきものなのです。

 さらに、ノイズを次のように分解します(前掲書 下巻 p.23)。

 

  システムノイズ = レベルノイズ

  パターンノイズ = 機会ノイズ + 安定したパターンノイズ

 レベルノイズとは、ある病院でがんを診断する際に、医者(A~D)で判断が分かれる場合です。機会ノイズとは、ある医者(A)が応援している野球チームが負けた時や配偶者とけんかをした時には、ネガティブな診断をしたということです(逆もしかりです)。

 安定したパターンノイズとは、ある医者(A)は午前中の診察は検査を指示するが、午後の診察になると検査よりも診断を重視するよう傾向がある。Aはなんらかの理由(生理的、肉体的など)でそうした診断をしたということです。

 当然、カーネマンはこれらのノイズを取り除くことが患者を公正に扱うことになると言っています。

 次の問題に皆さんはどのように答えますか?

医師は末期がん患者に対して告知をするべきかについて、六百字以内であなたの考えを述べなさい。ただし、患者は十分な判断能力を備えた十五歳以上の者であるとする。(注 「改訂版 世界一わかりやすい医学部小論文・面接の特別講座」より)

 

 次回までに解答を考えて書いてみてください!

 

 今回、この問題について、読者の方の解答を募集します!私の解答は提示しましたが、

皆さんの独自の考えをお寄せください。その解答のいくつかをご紹介したいと思います。

実践的な展開をしますので、奮って配信をお願いします。

宛先はserajobin3@gmail.com

 

 

 

(注)