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小論文教育 No5 小論文のテーマ「グローバール化」に、注意すべきは何か?

小論文教育 No5:小論文のテーマ「グローバール化」に、注意すべきは何か?

 今回、小論文のテーマについて説明していきます。取り上げる参考書は、「試験にでる小論文」(樋口裕一 青春出版社)です。本書によると、次のような10テーマがあります。

 1グローバル化、2ボランティア・福祉、3教育、4民主主義と日本の政治、5日本文化、6少子高齢化・人口減少、7医療、8情報化、9持続可能な社会、10コロナ後の世界

 

 この本の活用の仕方は知識を習得することです。英単語集の意味の確認のように、斜め読みをして自分のよく知らない知識については、ゆっくり読むといいのではないでしょうか?

 時間のない方は、自分の志望校の問題を検討してこの10テーマの内、どのテーマが出題されているかを見てからそのテーマを読み始めることをお勧めします。

 

 それでは、私が気になったテーマを取り上げてみます。

「1グローバル化」です。グローバル化はよく出題されるテーマです。ウクライナへのロシア侵攻以来、考えなければならないテーマへ変わってきていると思います。

 

  皆さんは、答えるべき内容はそう変わらないと考えていると思います。はたしてそうでしょうか?

 

 2008年のリーマンショック以来、世界経済の成長を支えてきた中国、そしてロシアに於けるエネルギー開発、投資、またサプライチェーンによる新興国の経済成長など、グローバル化はこの十年間で進展しました。

 ここまでの内容がグローバル化として問われる内容でした。

 

  では、中国、ロシアは現在、どうなっているでしょうか? 

 

 中国はアメリカと経済対立を引き起こしています。中でも、台湾をめぐる半導体の供給問題です。皆さんのご使用の携帯電話からパソコンやゲーム専用機など、さまざまな電子部品に使われていますよね。

 ロシアはウクライナ侵攻以来、エネルギー価格の高騰をもたらし世界の経済成長に停滞をもたらしています。ガス、石油ですね。石油は車の燃料を思い浮かべますが、プラスチック製品に使用されます。住んでいる家の中のものを見れば、プラスチック製品ばかりですよね。

 さて、こうした中国とロシアと先進国の国際関係が、今までのようには行かないと考えられます。こうした所まで、解答に書く際には知らなければなりません。

 

  だから、小論文の問題は「時事性」に左右されるのです。

 

 さらに「グローバル化が日本国内の階層化をもたらした」(前掲書 p.42)とあります。注意してほしいのは、この書き方です。「階層化」というのは経済的格差をさしているようです。経済的格差をもたらしたのは、グローバル化が原因と読めます。本の中でも、労賃の差が製品の値段の差をもたらした結果、非正規の社員を増やしたことが書かれています。

 非正規の社員が増えれば、所得格差をもたらします。ですが、グローバル化が非正規の社員を増加させたのでしょうか?

 

  皆さん、どう思いますか?

 

 日本の国内の会社は9割以上、中小企業です。皆さんが思い浮かべる、トヨタ、HONDAなどの大企業は1割です。一方で中小企業のほとんどは国内産業で、国内の需給関係で成り立っています(もちらん、中小企業で海外に輸出している企業もあります)。

 そうすると「グローバル化」の中で正規社員の整理をしている大企業についてしか、「グローバル化が日本国内の階層化をもたらした」と、正しくは言えません。

 

  だから、考えることが必要なのです。

 

 次に「2ボランティア・福祉」についてです。「これからの地域の福祉を担うのは、住民のボランティア活動だ」(前掲書 p.51)とあります。注意してほしいのは、この書き方です。ボランティアも必要です。ですが、高齢社会を支えているのは、介護保険制度です。40歳以上になると、誰もがこの保険料を負担します。そして、こうした社会保険料を支えているのは、現役世代です。この社会保障費をまかなえなくなり、赤字国債を発行しています。社会保障制度自体をどのような仕組みで持続していくのかが鍵ではないでしょうか?

 

 たとえば慶應義塾大学のFIT入試では次のようなグラフを読み取らせています((注1)より引用)。

慶應義塾 FIT入試

 今度は、「4民主主義と日本の政治」についてです。正規雇用と非正規雇用の賃金格差の是正が政治の急務である」(前掲書 p.89)とあります。確かにその通りです。ただし、現在、働き方改革以来、多様な働き方を認めることで労働者の生産性を上げて給与upをしようというのが、現在の社会制度改革です。

 たとえば、所得税制も15歳以下の子について扶養控除を廃止し、一律子ども手当にしました。非正規の人も一律に支給されるのです。これも働き方改革の影響です。そうした社会制度について、理解をした上で、それでも「急務」の課題として賃金格差が残されていると書くべきではないでしょうか?

 

 だから、考えて書くことが大事です。

 

 樋口裕一の本書は、受験生が活用すべき参考書です。でも、そのテーマについて考えないといけません。 

 次回は「6 少子高齢化・人口減少」(前掲書)について取り上げます

 

(注1)詳しくは「7日間で合格する小論文」をお読みください。